head_img_slim
HOME >研究用語辞典 >コーディング

コーディングとは?

コーディング』(こーでぃんぐ、Coding、仏語表記:Codage)とは、研究データ、特に質的データを整理・分析するために、テキストデータや観察データにラベルやカテゴリーを付与するプロセスを指します。コーディングは、データに意味を与え、パターンやテーマを見出すための基盤を提供します。特に質的研究において、膨大なデータを整理し、解釈するために不可欠なステップです。

コーディングの歴史と由来

コーディングの概念は、20世紀初頭の社会科学研究におけるデータ分析の進展とともに発展しました。特に、質的データを体系的に分析するための方法論が求められる中で、コーディング技術は重要な役割を果たすようになりました。グラウンデッド・セオリー(Grounded Theory)や内容分析(Content Analysis)といった質的研究の方法論が確立されるにつれて、データの意味を抽出し、理論を構築するためのツールとしてコーディングが広く使用されるようになりました。

コーディングは当初、手作業で行われることが一般的でしたが、1980年代以降、コンピュータの普及により、データ管理と分析の効率化が進みました。現在では、NVivoやMAXQDAなどの専用ソフトウェアが開発され、コーディングプロセスがさらに精緻化・自動化されています。

コーディングのプロセスと利点

コーディングのプロセスは、通常、以下のステップで進行します:

  • 初期コーディング: データに対して初期的なラベルを付ける段階です。この段階では、データの各部分に簡単なラベルやキーワードを付与し、どのようなテーマやパターンが現れるかを探ります。
  • 集中的コーディング: 初期コーディングで得られたラベルをさらに詳細に分析し、カテゴリーやサブカテゴリーを形成します。この段階では、データの意味やコンテキストに基づいてラベルを再評価・修正します。
  • 理論的コーディング: 集中的コーディングで得られたデータを基に、理論やモデルを構築します。この段階では、データを理論的な枠組みの中で解釈し、新たな洞察や仮説を導き出します。

コーディングの利点は、データの整理と分析が体系的に行えることにあります。質的データは複雑で多様な情報を含んでいるため、コーディングによってデータを構造化し、意味を見出すことが容易になります。また、コーディングによって得られたパターンやテーマは、研究者が新たな仮説を立てたり、既存の理論を検証したりするための基盤となります。

現在の使われ方と応用

今日の研究活動において、コーディングは質的データ分析の中心的な役割を果たしています。例えば、インタビューやフォーカスグループの記録を分析する際に、コーディングはその内容を体系的に整理し、特定のテーマやパターンを抽出するために使用されます。このような手法は、教育研究、社会調査、医療研究など、多様な分野で広く活用されています。

さらに、コーディングは、混合法(Mixed Methods)研究にも適用されています。これは、質的データと量的データを組み合わせて分析するアプローチであり、コーディングによって質的データを構造化し、量的データと関連付けることができます。これにより、複雑な社会現象や人間行動をより包括的に理解することが可能になります。

また、最近ではテキストマイニングや自然言語処理(NLP)などのデータサイエンス技術が進化し、コーディングのプロセスが自動化されつつあります。これにより、大規模なデータセットを迅速かつ精度高く分析することが可能となり、研究の効率と信頼性が向上しています。

コーディングは、質的研究の核心的な手法であり、データの解釈と理論構築において重要な役割を果たします。今後も、研究者はコーディング技術を駆使して、データから有意義な洞察を引き出し、新たな知見を発見し続けることでしょう。



ページトップに戻る