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グラウンデッド・セオリーとは?

グラウンデッド・セオリー』(ぐらうんでっど・せおりー、Grounded Theory、Théorie ancrée)とは、データに基づいて理論を構築する質的研究の手法を指します。これは、研究者が現場で収集したデータから直接理論を導き出すアプローチであり、既存の理論に依存せず、新たな発見を促すことを目的としています。この方法は、特に社会科学や教育学、看護学などの分野で広く用いられています。

グラウンデッド・セオリーの歴史と由来

グラウンデッド・セオリーは、1967年に社会学者バーニー・グレイザー(Barney Glaser)とアンセルム・ストラウス(Anselm Strauss)によって提唱されました。この方法論は、従来の仮説駆動型の研究に対する批判から生まれ、データに基づいて理論を構築することで、現実の複雑さや多様性をより正確に反映することを目指しています。

「グラウンデッド」という言葉は、「地に足がついた」という意味で、理論が抽象的な仮説ではなく、実際のデータに根ざしていることを強調しています。英語では「Grounded Theory」、フランス語では「Théorie ancrée」と呼ばれ、この手法は現場での観察やインタビューを通じて、データから直接理論を導き出すことを重視しています。

グラウンデッド・セオリーの目的とプロセス

グラウンデッド・セオリーの主な目的は、実際のデータに基づいて新たな理論を創出することです。研究者は、既存の理論に縛られることなく、データから直接洞察を得ることで、新しい視点や理解を得ることができます。

グラウンデッド・セオリーのプロセスは、次のようなステップで進行します:

データ収集: 研究者は、インタビュー、観察、文書分析などを通じて、現場からデータを収集します。この段階では、データは構造化されていない生の情報です。

オープン・コーディング: 収集したデータを細かく分解し、意味のあるコード(ラベル)を付けて分類します。このプロセスを通じて、データの中から重要なテーマやパターンが浮かび上がります。

アクシャル・コーディング: コード同士の関係性を分析し、テーマを結びつけて理論を形成します。この段階で、データがどのように相互に関連しているかが明らかになります。

セレクティブ・コーディング: 最も重要なテーマを選び出し、それを中心に理論を構築します。この過程で、研究の焦点が絞られ、理論の構造が明確になります。

グラウンデッド・セオリーの現在の使われ方

現在、グラウンデッド・セオリーは、社会科学、人文科学、教育学、看護学など多くの分野で活用されています。特に、複雑な社会現象や人間の行動を理解するための手法として重宝されています。たとえば、看護学では、患者のケアに関する新しい知見を得るためにこの手法が用いられています。また、教育現場でも、教師や学生の経験に基づく理論を構築し、教育実践を改善するための方法として採用されています。

さらに、グラウンデッド・セオリーは、ビジネスやマーケティングの分野でも応用されています。顧客の行動や市場の動向を理解し、新たな戦略を策定するために、現場で収集されたデータに基づいて理論を構築することが求められる場面が増えています。

グラウンデッド・セオリーの将来展望

今後、グラウンデッド・セオリーはさらに進化し、より多様なデータ収集手法や分析技術と組み合わせられることで、研究の可能性が広がると考えられます。たとえば、ビッグデータや人工知能を活用したデータ解析が進む中で、グラウンデッド・セオリーを用いた理論構築がますます重要になるでしょう。また、異なる文化や背景を持つ集団に対する研究でも、現地の文脈に応じた理論を生み出すために、この手法が活用されることが期待されます。

結論として、グラウンデッド・セオリーは、現場のデータに基づいて理論を構築する強力な研究手法であり、その応用範囲は広がり続けています。今後も、この手法が研究活動において重要な役割を果たし続けることでしょう。



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