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ナラティブ分析とは?

ナラティブ分析』(ならてぃぶぶんせき、Narrative Analysis、Analyse narrative)とは、個人や集団の経験や出来事を語りの形で収集し、その語りを通じて意味や社会的な現象を理解するための研究手法です。ナラティブ分析は、物語やストーリーがどのように形成され、それが個人や文化にどのように影響を与えるかを探求します。特に、質的研究において、個々の経験やその背景にある意味を深く掘り下げるために使用されます。

ナラティブ分析の歴史と由来

ナラティブ分析の概念は、20世紀後半に社会科学と人文科学の分野で発展しました。心理学者ジェローム・ブルーナーや社会学者アーサー・W・フランクなどの研究者たちは、物語が人々の経験やアイデンティティを形成する中心的な役割を果たすと主張しました。これにより、物語がどのように社会的現実を構築し、個人の行動や思考に影響を与えるかを理解するための手法として、ナラティブ分析が注目されるようになりました。

「ナラティブ」という言葉自体は、ラテン語の「narrare」(語る)に由来し、物語や話を意味します。英語では「Narrative Analysis」、フランス語では「Analyse narrative」として知られており、研究者たちはこの手法を通じて、個々の物語に潜む意味を明らかにしようと努めています。

ナラティブ分析の目的とプロセス

ナラティブ分析の主な目的は、人々の経験やその背景にある文化的、社会的、歴史的な文脈を理解することです。これにより、研究者は、語られる物語の中に含まれる価値観、信念、アイデンティティを探求し、それがどのように形成され、再生産されるかを明らかにします。

ナラティブ分析のプロセスは、通常以下のステップを含みます:

データの収集: 物語が語られる場面を観察したり、インタビューを通じて個人の経験を収集したりします。これには、会話、日記、手紙、メディアの記事など、様々な形式のデータが含まれます。

物語の構造分析: 物語の構成要素(登場人物、出来事、結末など)を分析し、物語がどのように組み立てられているかを理解します。

テーマの抽出: 物語に繰り返し現れるテーマやモチーフを特定し、それらがどのように個人や集団の経験を反映しているかを探求します。

文化的・社会的文脈の解釈: 物語が語られる文脈を分析し、それがどのように社会的な規範や価値観に影響を与えているかを評価します。

ナラティブ分析の現在の使われ方

ナラティブ分析は、心理学、社会学、人類学、教育学、医療など、さまざまな分野で広く使用されています。例えば、心理療法では、患者の物語を分析することで、その人の問題や苦悩の根底にあるテーマを明らかにし、治療に役立てることができます。また、社会学では、特定のコミュニティや文化における共通の物語を研究することで、その社会的構造や変化を理解する手段となります。

さらに、教育現場では、学生の学習経験や教育環境における物語を分析することで、教育プログラムの改善や指導方法の開発に寄与しています。医療分野でも、患者や医療従事者の物語を通じて、病気の経験やケアの質を評価し、医療サービスの改善につなげることが行われています。

ナラティブ分析の将来展望

今後、ナラティブ分析はさらに多様な分野で応用され、個人や集団の経験を理解するための強力な手段として進化すると考えられます。特にデジタル技術の進展により、ソーシャルメディアやオンラインプラットフォームで生成される大量のナラティブデータが分析対象となり、これまで見過ごされてきた声や経験が明らかにされる可能性があります。

また、AIや機械学習の導入により、膨大なナラティブデータを効率的に分析する新しい方法が開発されることで、ナラティブ分析の精度や範囲がさらに拡大するでしょう。これにより、個々の物語が持つ社会的影響力をより深く理解することが可能となり、社会全体の動向や変化を捉える手段としての価値が一層高まることが期待されます。



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