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テーマ分析とは?

テーマ分析』(てーまぶんせき、Thematic Analysis、仏語表記:Analyse Thématique)とは、質的研究において、データ内に現れるパターン(テーマ)を特定し、整理し、解釈するための手法を指します。テーマ分析は、インタビューや観察記録、テキストデータなどの質的データを扱う際に広く用いられ、データを意味のあるカテゴリーに分類し、それらの関係性や意味を解釈することを目的としています。テーマ分析は、研究者がデータの複雑な現象を理解し、説明するための重要なツールです。

テーマ分析の歴史と由来

テーマ分析の手法は、20世紀中頃から発展してきました。心理学者や社会学者が質的データを分析する際、データ内に潜む意味やパターンを見出す必要がありました。テーマ分析はその中で、特にインタビューやフィールドワークのデータを扱う際に有効な方法として認識されました。

1990年代に登場した**グラウンデッド・セオリー**(Grounded Theory)は、質的データから理論を構築する手法として人気を集めましたが、その過程で用いられる「コーディング」手法がテーマ分析の発展に寄与しました。テーマ分析は、その後、独立した分析手法として確立され、心理学者ヴァージニア・ブラウンとヴィクトリア・クラークが2006年に発表したガイドラインにより、さらに広く普及しました。彼らの手法は、テーマ分析を体系化し、多くの研究者にとっての標準的な手法となりました。

テーマ分析のプロセスと利点

テーマ分析は通常、以下のステップで行われます:

  • データの熟読: まず、データ全体を通読し、全体的な理解を深めます。ここで、データの内容に慣れ、初期的な考えやアイデアを形成します。
  • 初期コードの生成: データの中で意味のある単位(コード)を見つけ出し、それらにラベルを付けます。この段階では、データの全体に対して多くのコードを生成することが一般的です。
  • テーマの特定: 生成されたコードを基に、類似のコードをまとめてテーマを特定します。テーマは、データの中で繰り返される重要なパターンを示します。
  • テーマのレビュー: 特定されたテーマを再評価し、データ全体との整合性を確認します。必要に応じて、テーマを統合したり、分割したりすることもあります。
  • テーマの定義と命名: 最終的なテーマに対して、明確な定義と説明を付けます。テーマの名前は、その内容を的確に表すものであるべきです。
  • 報告書の作成: 分析結果を報告書や論文としてまとめます。この際、テーマがどのようにデータに基づいて導き出されたかを明確に示します。

テーマ分析の利点は、質的データを構造化し、理解しやすい形に整理できる点にあります。柔軟性が高く、様々な研究質問に適用できるため、多くの分野で採用されています。また、テーマ分析はデータに対する理論的枠組みを必要とせず、研究者がデータから新たな発見を導き出す自由度を提供します。

現在の使われ方と応用

テーマ分析は、心理学、教育学、社会学、医療研究など、幅広い分野で使用されています。例えば、医療分野では、患者の体験や意見を理解するためにインタビューが行われ、そこから得られるデータがテーマ分析によって整理されます。このプロセスにより、患者のニーズや課題が明らかになり、医療サービスの改善に繋がることがあります。

教育研究においても、教師や生徒の視点を理解するためにテーマ分析が利用されます。例えば、新しい教育プログラムの効果を評価する際に、教師や生徒のフィードバックが収集され、それがテーマ分析によって分析されます。これにより、プログラムの強みや課題が明確になり、改善点が見つかることが期待されます。

さらに、テーマ分析は、質的データを量的データと組み合わせる混合法研究においても重要な役割を果たしています。例えば、テーマ分析によって特定されたテーマが、その後のアンケートや調査に組み込まれ、定量的なデータと結びつけられることがあります。これにより、質的な洞察が統計的に検証され、研究結果の信頼性が高まります。

テーマ分析は、質的データから意味のある洞察を引き出し、複雑な社会現象を理解するための強力なツールであり続けるでしょう。今後も、研究者はこの手法を活用して、新たな発見や理論の構築に貢献していくことが期待されます。



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